またとんでもない戦略を思いついてしまった……
自らの才能に震える……!

……というわけで、なんかすみません。
日々いろいろな可能性を探って荒野を彷徨っている私が、また一つ余計なことを思いついてしまいましたので、人生の貴重な時間を数分ドブに捨ててくつもりで聞いてってください。

あ、ちなみに当然ですけど、真似したりするとフツーに死ぬのでやめてくださいね。

責任は一切とらないぞ!

VIXMロング × VXXショート 戦略
はい。今日はこれですね。
こんなこと考えてみました。

これまで色んな戦略を考えたりしてましたが、いずれもロングのみだったんですよね。
でもこの2022年においては、現物株式は勿論、債券やVIX先物ETF(ETN)であってさえ下落しました。

今年は一部のコモディティしか勝たんかったね!
株式と債券が同時に暴落するとはのぅ!

そう、今年唯一輝いた資産クラスといえばコモディティだったかと思いますが、しかしインフレに備えて数十年間日陰者だったコモディティを保有するにはそれなりの勇気がいります。

では他に、どんな有用な投資法があったかと言えば……
そう! ショートですよね!


とはいえ。


短絡的にショートしたりベアインデックスETFを買ったりしても、市場が反騰したら爆死するわけですから、結局現在やってる博打と大して変わりませんね。

博打してる自覚は……
……あったのですね……

では何ならショートしても大丈夫なのか。
勿論絶対安全なショート銘柄なんて存在しませんがしかし……

$VXXなら!
VXXならいけるのでは!!??!?




……なーんてね。




そんな安易な考えをもって、2018年初頭、多くのギャンブラーがVXXのベア版であるXIVを握りしめたまま……
死にました。


VIX銘柄とは
ここでちょっとおさらいしましょう。
VIX銘柄は名称が似ている上に少しややこしいですから。
$VXX:VIX指数短期先物ETN。多くの期間コンタンゴであり、長期でみると必ず価格が下がるが、有事の際には暴騰する。
$VIXM:VIX指数中期先物ETF。多くの期間コンタンゴであり、長期でみると必ず価格が下がるが、有事の際には暴騰する。VXXに比べれば動きはやや緩やか。
$XIV:かつて存在した、VXXのベア版ETN。長期でみると必ず価格が上がる。有事の際には暴落する。

上記の通り、VXXとVIXMはいずれも大抵の時期においてコンタンゴ状態であり、長期でみれば理論的に確実に右肩下がりになる商品です。

つまり、ショートすれば、理論的には負けないわけです!
そう、理論的には……。

$VXXは理論的にみればかならず右肩下がりになる」という特性から、そのベア版、つまり逆に動くXIVは、理論的に必ず右肩上がりになるという商品でした。

右肩に上がり続けるとか、夢のような商品ですね!
夢のようなっていうか……実際夢で終わったんですけども……。


XIV即死事件
なぜその約束された右肩上がりが、儚くも壮絶に散っていったか。
それは、このXIVが早期償還条項、通称「即死条項」に触れてしまったからです。

その即死条項の内容とは、「1日で80%以上下落したら償還ッス。まじッス」というもの。
数日かけて80%の下落なら問題ありませんが、1日で80%下がると運用が困難になるため償還される、というわけですね。

でもまぁ流石にね。
いくらボラティリティが激しい商品とはいえ、まさか1日で80%下落はないでしょ 笑






XIVが即死した瞬間
きゅーん 笑






このように、「まさか起こらないだろう」と皆がたかを括っていたことが実際に起こってしまい、理論的に上がり続けることが約束された商品XIVは、多くのギャンブラーの命とともに爆発四散しました。

ちなみに──、なぜ私がこの商品を知ったかというと、古いBlog記事で語られていたのを見て、実際に買おうとしたからですね。

すわ購入! と証券会社の検索窓に「XIV」と打ち込んでみるもののなぜかヒットせず、調べてみたら上記のような壮絶な最期を遂げたと知って他人事ながら冷や汗をかいたのでした。

もう少し早くこの商品を知っていたら、一緒に爆発四散してたよ!

というわけで、理論がどうあれ「あり得ないなんてことはあり得ない」のが株式市場。
いくら$VXXが理論的に右肩に下がり続け、ショートで利益を生み続けるといっても、何が起こるか分からない市場では適切なヘッジをとらなければいけないわけですね。

そこで考えたのが、$VIXMのロングとの組み合わせですよ!

VXXショートで利益を取り、VIXMでヘッジする
基本的には$VXXのショートで利益をとりつつ、急騰してしまった際のダメージを$VIXMで補う、という戦略ですね。

なぜ逆ではないのか──VIXMをショートしてVXXをロングに置かないのかといえば──、コンタンゴがVXXの方が強く、下落スピードが速いからですね。

2022年のVIX指数とVXX、VIXMの動き
2022年のVIX指数(左軸)と、VXXとVIXM(右軸)の動き


対してVIXMは右肩に下がるといっても動きが緩やかで、これで利益を確保するのは難しい。
しかしいずれも有事の際には急騰するので、適切な割合保有しておけば、平時はVIXMがじわじわ下がるが、より早く下がるVXXをショートして利益を確保、有事の際にはVXXが暴騰してしまうが、VIXMも負けずに上がるのでVXXョートのダメージを最小まで抑えることが可能。

──なのではないかな?と。

はい、妄想ですね。
全部。

しかし、これを妄想で終わらせては闇雲に博打を打つのと変わりません。
ですのでまた一からシミュレーターを作ってみるわけですね。

今まで散々ロングオンリーのシミュレーターは作ってきましたが、ショートを絡めたものを作るのは初めて。

イマイチ勝手がわからず、果たして書いた関数があってるのか、そもそもショートしたときのCash Balanceの概念を正しく理解してるか非常に不安ですが、やってみました。

残念ながら、Googlefinence関数では$VXXのヒストリカルデータが2018年の1月18日までしか遡れなかったため、ここからのシミュレーションデータになります。

その結果は……。

VXX × VIXM

'18/ 01/ 18(木) 〜 '22/ 12/ 31(土)の約5年で+130.34%!!

素晴らしいじゃないですか!!
この、ボラティリティを感じさせない緩やかな上昇!

年によってはほとんどリターンがないこともありますが、大規模な下落もなく、悠々と空を飛ぶ大きな鳥のような軌跡を描きました。

尚、上記シミュレーションの$VIXMロングと$VXXショートのポジションサイズ比は7:3。
この比率を変えると年によっては結果がやや変わりますが、概ね8:2からこの7:3あたりがベストな比率に見えました。

また、リバランスのタイミングは週1から半年に1回まで、色々試してみましたが、これといった解はない様子で、割とフランクにリバランスしてよさそうです。

これは新たな主戦力となり得るのでは……!?

と思うものの……。

懸念されること
素晴らしい戦略を思いついたと小躍りする反面、ちょっと不安な点もいくつかあるんですよね。
まず……

私が書いた関数が疑わしい
はい、まずはそこですね。

そそっかしいぼくが間違いもせず関数を書くとはとても思えない!

特に今回は、初めてのショートを交えた計算式でもあるので、ちょっと自信ないんですよね。

私のそそっかしさを差し引いたとしても、この結果はよく出来過ぎです。
こんな簡単に資産増えちゃったら逆に問題ですし。

また、いくら私が「変人」と罵られ「産むんじゃ……なかった……」と言われながら生きたとしても、この程度の戦略を他人が思いつかないとも思えません。

誰かが思いつき、このリターンを確認したならば、6:4ポートフォリオなんかよりずっと有名になってるはずでしょう。

6:4ポートフォリオは最近特に酷い成績だしね

そうでないなら、「私の書いた関数がずいぶん都合が良い方向に間違ってる」と考えるのが自然です。

上でも少し書きましたが、ショート戦略を組み込んだシミュレーターは初めて作ったので、このあたりの何かが間違えてそうな予感がします。

なんであれ、良すぎるシミュレーション結果を信じるのは危険なことです(TECLを握りしめながら)。

さらに。

VIXMが1446条にひっかかる可能性
先日の記事で紹介した、米国市場で来年1月1日より施行される、1446条。
記事でも触れましたが、これに$VIXMが引っかかってるんですよね。

具体的に言えば、$VIXMの売却費に対して10%が都度源泉徴収される、とのこと。

信じられますか?
「売却益」ではなく「売却費」ですよ?
損失が出てようとなんだろうと、100ドル分売ったら10ドル取られるわけです。

ありがたいことにコメント欄で「W8-BEN 提出すれば対象外なのでは」という指摘があり、その通りであればこの徴収から逃れられるのですが、まだはっきりわかりません。

もし売却する度に源泉徴収されるのであれば、資金効率が相当に悪化しますので、まず無理ですね。

ただ、前述の通り、リバランスの回数にあまり依存しない戦略ですので、例えば半年に一回のリバランスに済ませれば、大きく資産を失うこともないでしょう。

タイミングによってはVXXがショートできない
これも痛いですね。
$VXXは有事の際に暴騰し、その後急激に下がる特性があることから、暴騰したタイミングでショートをして、短期で利益を掻っ攫おうとする投機家に人気の銘柄でもあります。

今回の戦略は短期で利益をとるものではありませんが、しかしちょうどリバランスのタイミングがこの暴騰した時期と重なっていると、貸株が枯渇してショートができなくなることが予想されます。

実際何度か、私が使っているFirstradeで$VXXがショート不可になってたのを確認しています。

──というか、実はこの記事を書きつつ実験がてら$VXXのショートポジションを幾らか建てていたんですが、少し買い増ししようかな? と思ったらもう規制かかってて売れませんでした。

具体的には昨年末12/30の、取引始まって2時間後(現地時間11:30ごろ)くらいにはすでにショート不可になってました。
下図1つめはその日の1分足チャート、2つめは直近3ヶ月の日足チャートですが、この程度でショート不可になるようではちょっと厳しいですね……。
2022-12-30 VXXの動き

2022年末のVXXの動き

とはいえ、これも前述同様、リバランスに焦ることがない戦略であるため、ショートできないならできるようになるまでゆっくり待ってから行なっても、おそらくリターンに大した差は出ないのでは? とも思います。

暴騰した頂点でショートできればこの上ありませんが、今回のシミュレートでは別に頂点を狙ってリバランスをしたわけではないのにそれなりの結果がでているわけですから、焦る必要はそれほどなさそうです。

おわりに
一番の懸念が私の「数式ミス」という……。

このあたりがクリアになれば、割と本気で運用してみたいんですけども。

パッと閃いた即席の戦略ではありますが、これをヒントにさらに面白い戦略が皆様の頭に閃きましたら幸いです。

何か良さげな戦略が思いついたら、ひっそりと耳打ちしてくださいね! ★★